2012年度春学期の研究会1(仏欧研究)及び2(哲学入門)予告
研究会B(1)・月曜4限~
《現代フランス~ヨーロッパ研究(歴史からのアプローチ)》のシラバス概要
■目的と手法
現代のフランス、またはヨーロッパ(全域or特定の地域)に関して、政治や社会文化など、アクチュアルなさまざまの事象ないし問題を研究することを目的とします。「現代」への関心に裏打ちされるのであれば、古い時代を対象とする研究も受け入れます。
本研究会の特徴は、上記の研究を、西洋史の「通史」を学びつつ(学び直しつつ)、歴史学的視座を大切にしながらおこなうという点にあります。
現代世界は、革命のような大きな構造変化を経た場合でも、実は過去と断絶してはいません。むしろ、過去から継続するひとつの展開の新たな一局面として存在しています。ですから、政治であれ、経済であれ、文化であれ、現代の事象を的確に理解しようするならば、歴史的背景を学ばなければなりません。未来に向かって何らかのヴィジョンを示そうとするときにも、歴史的知見が不可欠です。
というわけで、本研究会では、大きすぎるテーマを設定してやみくもに調べるのではなく、また、レディメイドの「解釈格子」を研究対象に適用して現実をカッコよく「解読」するなどということをするのでもなく、むしろ正攻法で、高等学校の世界史の授業で扱われるようなヨーロッパ史の基本的な流れを把握し、基礎的な知識を確認しつつ、テクストや最新の資料・データに基づいて、学問的裏付けのある研究を遂行します。
今日的な現象とそのデータを歴史の文脈の中に位置づけながら一歩ずつ研究を進めるというやり方は、エキサイティングというよりは、かなり地味な印象を与えることでしょう。しかし、たとえ地味であっても、過去から現在へ、そして未来へと続く長いスパンの歴史の厚みと継続性の中で現代のあり方を捉えないかぎり、真に有意な未来への展望を見出すことも、有効な政策をデザインすることも叶いません。いいかえれば、同時代の政治、経済、文化等の〈真実〉をつかみ取ろうとする者が注目すべきは、観念的な未来から逆算された「現在」ではなく、実証的に確認できる「歴史の中の現在」なのです。
■2012年度春学期の内容
① 輪読(グループワーク)
フランソワ・ギゾーの1828年の著作、『ヨーロッパ文明史』を共同で読み解きます。数人の参加者からなる発表グループが文献の内容を要約するとともに、そこで議論されている歴史的出来事について解説します。発表グループには、セミナーで議論すべき論点を提示することも求められます。
※ 輪読文献
フランソワ・ギゾー(1828)『ヨーロッパ文明史(新装版) ― ローマ帝国の崩壊よりフランス革命にいたる ― 』安士正夫訳、みすず書房、2006年。
フランソワ・ギゾー(Francois Guizot)(1787-1874)は、フランスの歴史家、政治家。1830年に始まる七月王政(オルレアン朝)で首相を務めたことで知られていますが、れっきとした学者でもあり、学問研究を通して、ローマ帝国の瓦解からフランス革命にいたるヨーロッパの文明の流れに見事な歴史的展望を与え、ヨーロッパの文明の構造を明らかにしました。
『ヨーロッパ文明史』は、ギゾーの卓越した知力と想像力の結晶と目され、多くの言語に訳されています。邦語訳も複数存在します。福沢諭吉先生の『文明論之概略』に多大な影響を与えたことは、特筆に値するでしょう。ギゾーの歴史観は、現代の教養あるヨーロッパ人の歴史認識の底辺に深く浸透しているという点からも注目に値します。
この文献を輪読し、ギゾーの歴史観や研究手法、さらにギゾーの歴史観とわれわれがすでに持っている歴史知識 ― 固定観念? ― との差異などを議論することを通して、現代フランスおよびヨーロッパの政治・社会・文化等をどのように理解することができるかということについて考えていきましょう。
② 個人研究と発表
参加者は一人ひとり、必要なら指導教員と相談しながら、このシラバスが提示している本研究会の趣旨に何らかの形で対応するテーマを設定し、自分なりの目標を定め、セミナーで2~3回の発表を行いながら研究を進めます。現代のフランス、またはヨーロッパの全域、あるいはその特定の地域を主なフィールドとしてください。「現代」 ― われわれの同時代 ― に関する問題意識が背景にあるのならば、古い時代のことを調べるのもOKです。
参加者それぞれが、個別具体的なテーマを設定して研究を進めていくことが期待されますが、未だテーマを特定するに到らないという場合には、何らかの重要文献を読み、その内容をまとめ、コメントするという形を採るのも、卒論・修論等へ向かう研究プロセスとして、けっして悪い選択ではありません。
とにかく、一学期間をかけて、たとえ小さなことでも何か一つ成し遂げることが重要です。学期末にタームペーパー書き上げ、堀研恒例の合宿(2泊3日、参加必須)での最終発表を終えたとき、ひとつの達成感が残るように頑張ってもらいます。
研究会B(2)・木曜4限~
《哲学入門 ― よく生きる&共に生きるために ―》のシラバス概要
■目的と方法
哲学する(=個人として「よく生きる」ために、且つ他者たちと「共に生きる」ために、物事を根元的に問い直し、考える)ことを学ぶのが、第1の目的です。
本研究会の特徴は、この目的を見据えて毎学期、西洋哲学を代表するような必読の著作を一冊、または複数冊、メンバー全員共同で批判的検討を加えながら熟読し、完読するというところにあります。
一般に想像されていることとは裏腹に、哲学という学問は、理論や知識である以上に、活動・実践です。それを学ぶにはどうすればよいか? 過去の偉大な哲学者が残した著作を丹念に読み、できるかぎり正確で深い理解に努めながら、その著者と対話するかのように、自分の頭で考えるのが一番です。
というわけで、本研究会では、哲学史の本を受験勉強風に丸暗記するのではなく、また、知的スターとして世人の憧れの対象となっている現代哲学者たちの本をやみくもに漁(あさ)って結局つまみ食いに終わるのでもなく、むしろ正攻法で、時代を超えて残った古典的名著を、基本的な概念の定義を確認しつつ、立論の厳密さを検討しつつ、じっくりと読み進めます。
その上で ― これが本研究会の第2の目的なのですが ― 大学院生、卒業プロジェクトの履修者、そしてテーマ研究をやってみたい人には、輪読で培った哲学的スタンスと思考力を元にして一歩、二歩踏み込み、次の三つのタイプのいずれかに分類されるような研究を試みてもらいます。
①思想上の何らかの概念や問題について、複数の哲学者のテクストを批判・検討したり、援用したりしながら、自らひとつの試論に到ろうとする。=哲学
②特定の哲学者の思想や、思想上の何らかの問題をめぐる複数の哲学者の思想的探究の経緯を、それらの深い部分まで明らかにしようとする。=哲学史研究
③哲学的視座に立って、政治、社会、文化、教育、環境、メディアなどの具体的諸問題の根元に光を当てることで、問題解決に寄与しようとする。=応用哲学
#実際、高齢化から移民問題まで、学校のあり方から現代芸術の混迷(?)まで、あらゆる問題の核心には、哲学的な問い ― (例)老いとは? 他者とは? 権威とは? 美とは? ― が横たわっています。基礎医学に基づく臨床医学があるように、哲学に基づく応用哲学(←けっして万能ではないでしょう)があり得るはずです。
■ 2012年度春学期の内容
① 輪読(原則的に、メンバー全員)
2012年度春学期には、18世紀ドイツの哲学者イマヌエル・カントの『判断力批判』(1790)を読みます。現代における共生という法哲学・政治哲学的課題との関連ではカントの全著作中でも最も重要と目されている本です。美と目的性のテーマを追究したこの名著は、「われわれは何を希望することができるか」という人生の究極の問い ― 意味の問い ― に対応しています。
本研究会では、2011年度春学期にカントの『純粋理性批判』(=第一批判書)を、同秋学期に同じく『人倫の形而上学の基礎づけ』(1785)と『実践理性批判』(1788)(=第二批判書)の読解に取り組みました。2012年春学期から本研究会に参加する人は、いきなり第三批判書の『判断力批判』を読むわけで、容易なことではありませんが、思い切って食らいつき、時間をかけて苦闘すれば視界が開けていくでしょう。
※ 輪読文献
・『カント全集、8:判断力批判(上)』、岩波書店、1999年。
・『カント全集、9:判断力批判(下)』、岩波書店、2000年。
(現在品切れであるなどして容易に入手できないため、研究会でコピーを用意します。)
なお、オリジナルのドイツ語版、仏訳版、英訳版などを参照することを推奨します。
参加者はテクストをただ漫然と通読するのではなく、まず自分自身で徹底的に熟読した上で共同討議に参加してください。そして、自分の「読み」を、担当教員を含む他のメンバーの「読み」、とりわけ各回のレジュメ担当グループの「読み」と突き合わせることを通して検証していくのです。本気で取り組めば、必ずや貴重な発見があることでしょう。学期末には、恒例の合宿(2泊3日、参加必須)において、メンバーそれぞれが、輪読文献に関する自分なりの考察を発表することになっています。
② 個人研究と発表(大学院生、卒業プロジェクト履修者、希望者)
大学院生、卒業プロジェクト履修者、そしてテーマ研究をやってみたい人は、このシラバスが提示している本研究会の目的に何らかの形で対応するテーマを設定し、自分なりの目標を定め、定例セミナーでときどき発表をしながら、また必要なら個人的に指導教員に相談しながら、ステップ・バイ・ステップで、研究を進めてください。学期末には、修論、卒論、またはレポートと、合宿での口頭発表により成果を形にしてもらいます。
■注記
上記2つの研究会(ゼミ)は、いずれも堀茂樹研究室の核を成す、いわば一対(いっつい)の研究会です。このさい深く堀研に関与するかたちで濃密な勉強をしてみたいという気持ちの人には、両方とも履修することを推奨します。いずれにせよ、両研究会はふだんから研究室空間を共有するのみならず、サブゼミなどを相互乗り入れ的に実施します。また、2泊3日の学期末・最終発表合宿をはじめ、研究室恒例のいくつかのイヴェントは合同で行います。
サブゼミとしては、「哲学の基本概念」、「西洋史の基礎知識」、「フランス語原典講読(中上級)」などの開講が予想されます。
在学生の履修申請メールの〆切は3月24日(土)24時00分です。
詳細は、以下のサイトへ。
http://vu8.sfc.keio.ac.jp/course2007/seminar/p_syll_view.cgi?yc=2012_36598 (仏欧研究)
http://vu8.sfc.keio.ac.jp/course2007/seminar/p_syll_view.cgi?yc=2012_36599 (哲学入門)